2014年09月16日

女心と秋の空

 ちょっとサボったな、と思って前回の投稿日時を確認してみれば5月じゃないですか。いつの間にか蝉が鳴き、いつの間にか秋の虫の音が...。この夏は私事で余裕が無かったこともあり、書かなければと思いつつ時間が経ってしまいました。

 今年の夏は短かったですね。それなりに暑く、しんどい時期もありました。しかし今はもう、薄着では朝晩寒くなってきました。いつもならもう少し、半袖で過ごせたと思います。

 自転車通勤ということもあり、普段からとんでもなくラフな格好です。医師というとネクタイに白衣が当たり前と思ってらっしゃる方も多いでしょう。実際、勤務医の頃はネクタイはともかく年齢相応の服装でした。電車に乗りますし、勉強会や学会などオフィシャルな会合も頻繁にあったためです。

 しかし開業して以来、自宅とクリニックの往復ばかり。しかも公共交通機関の利用もほとんどありませんから、少し油断もあるかもしれません。まるでそのまま堤防で釣りが出来そうな格好です。丁度いい変装になり、街で誰かに会ってもまず気が付かれることはありません(自分でそう思っているだけかもしれませんが)。

 ごく稀に患者さんに声を掛けられることもありますが、基本的に目の悪い方が多いせいか年に数回です。私の方が気付いても、こちらからは声をかけることはしません。恥ずかしいという事もありますが、冷たくしている訳ではないんです。

 患者さんの中には通院していることを周囲に内緒にされている方もいます。闘病中であることを知られたくない方は少なくありません。様々な事情があると推察します。そんな事情を、私と会話していることによって暴露する訳にはいかない訳です。なのでとりあえず知らん顔をします。決して無視している訳ではないのであしからず...。

 先日、睫毛を長くする薬が発売されることになったと製薬会社の方から伺いました。元々は緑内障の薬なので、我々には馴染みのある製剤です。プロスタグランジンというんですが、眼圧を下げる効果が非常に優れていおり、この20年くらいで一気に普及しました。

 この薬にはいくつか副作用があり、中でも睫毛が長く濃くなる多毛は有名です。最近の化粧のトレンドを反映してか、この薬の副作用を逆手に取って、睫毛を長くする薬として個人輸入されていると聞いていました。ヤフオクなどにも流れていたりします。他にも色素沈着や目の落ち窪むなどの副作用があるので、無節制な濫用はまずいなあと思っていました。

 そんなネガティブな印象を持っていたので、担当者にどうして発売に至ったのか尋ねました。美容目的では無いかという点に抵抗を感じたためです。しかし彼から聞いた言葉は意外なものでした。曰く、抗がん剤などの使用で睫毛が無くなっちゃった方などが使われると。

 確かに最近では抗がん剤も様々で、副作用が目立たないものもありますが、未だに脱毛はよくある副作用です。頭髪の場合、よくできたウィッグなどがあり、ほとんどわかりません。しかし睫毛はそうはいきません。エクステもマスカラも残ってなければ使えません。

 病気である事を隠しておきたい方は、様々な事情でこれからもいらっしゃるでしょう。そんな方の助けになれば、このような薬も大きな助けになるかもしれません。

 女心とは難しいものですね。秋空を眺めつつ、そんなことを考えました。

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2014年05月16日

カラダのウラオモテ

 5月の連休も終わってしまいました。もう7月の海の日まで祝日が無いかと思うと少し残念です。3月からスギ、ヒノキと続いてきた花粉症もいよいよ終わりました。まだちゃんと統計が出ていませんが、ここ数年で一番少ない飛散量だったのではないでしょうか。

 実際に外来でも患者さんの数、重症度ともに僅かであったと感じます。昨年が酷かったこと、冬期が低温であったことがなどが原因ではないかと思います。ただ花粉症とされる患者数の増加、発症年齢の低年齢化も報告されており、油断なりません。

 花粉症をはじめ、アレルギーとは身体に入ってくる物質を異物と認識することから始まります。どこから入ってくるかといえば、大雑把に口からと皮膚からです。食べ物として消化管の粘膜を経由するか、体表面の皮膚を経由するかです。

 食べ物として入ってきたものには異物として排除しない、つまりアレルギーを起こさないような仕組みがあります。我々は食物として植物から動物まで様々なものを口にしますから、これは道理にあった仕組みです。逆に皮膚を経由した場合、これを異物として認識し攻撃する仕組みがあります。

 皮膚が身体の最表面にあって内部を守っているということから考えて、これも道理にあっています。また皮膚は触覚という感覚器でもあるので、危険なものか否か水際で最初に判断するには都合がいい。単細胞生物の時代から物質のやりとりを担ってきた表面というのはとても大事でした。ただの皮、内蔵を入れておく容器ではありません。

 例えば食物として問題無く食べていたものにアレルギーを起こすようになるのはどうしてか。もし食物が皮膚に接触し、その奥の免疫に関連する細胞まで届いた場合、異物として認識されます。その結果、食べた時にも激しく攻撃され、アレルギーを引き起こします。

 少し前に、「茶のしずく石鹸」により小麦アレルギーを発症するという事件がありました。石鹸に含まれる小麦の成分が原因とされています。この時は気が付かなかったのですが、これが石鹸であったために事態が悪化した可能性があることを後で知りました。

 食物としてはありふれた食材である小麦です。パンでもお菓子でも口にすることが多いと思いますが、ポイントはこれを皮膚に塗ったことです。皮膚から侵入した抗原は異物とみなされる。この仕組みによって、小麦アレルギーが引き起こされた可能性があるというのです。とくに石鹸のような界面活性剤は肌の角層を傷めますので、よけい侵入しやすくなります。

 他にもピーナッツアレルギーではピーナッツ入りクリームを使った経験がある子供に多いことなどが報告されており、皮膚を経由したアレルギーは他にもありそうです。元々アトピーなどでは皮膚のバリア機能が低下しているため、余計に感作しやすいことが考えられます。

 いかにも天然成分で耳に心地よい材料を使った製品は、美容関係にたくさんありそうです。少し寒気がしました。乾燥や荒れで、よかれと思って塗ったなにがしかが、かえってアレルギーの原因になりうるということ。清潔志向で石鹸を使って洗いすぎてしまうこと。たぶん良くあることではないでしょうか。

 最近、皮膚とアレルギー、免疫の仕組みに興味があって色々と勉強しています。疑問に思っていた生理現象について、なるほどと合点がいくことが多いです。

 口から入ったものに対しては異物として排除しないというもう一つの仕組み、これを利用してアレルギーを克服する取り組みもあります。脱感作というのですが、アレルギーの原因となっているものを少量ずつ口から摂ることによりアレルギーを起こさなくする治療法です。花粉を含んだ米を毎日摂ることによって花粉症を治すというのも実現間近と聞きました。

 小学校の検診から座高とギョウ虫検査が無くなるそうです。環境から糞便をはじめ、古典的な不衛生な要素はほとんど排除されているということでしょう。むしろ清潔を指向して、我々はどんどん本来の環境から離れて暮らしています。自然志向とは、天然素材を使った製品を消費することではなく、外に出て土に触れること、なるべく手の加わっていない物を食べることかもしれません。

 身体の外側で環境と対峙し、内側で懐柔する。考えてみれば単細胞生物だって、棘皮動物だってやっていることは同じことです。我々の高度な神経系も元々は皮膚から派生して出来たことが発生学的には分かっています。皮膚のセンサーとしての高度な能力が、そのまま中枢神経系に発展していったと考えれば、皮膚がただの皮ではないということが良く理解できます。

 皮膚のセンサーとしての働きが正常に行われるように、無闇に余計なことをしないことが肝要かもしれません。瞼というのは皮膚の中でも特に薄いことが知られています。紫外線、汗、化粧、温度湿度の変化に曝され荒れてしまえば、アレルギーの原因となる抗原との最初の接触現場に成りかねない。それを実感します。

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2014年04月11日

新年度

 4月が来てクリニックもまた一つ年を重ねました。桜の咲く季節に開業して本当に良かったと思います。毎年晴れやかな気持ちになります。気分も一新してまた頑張りたいと思います。

 さて世間ではSTAP細胞疑惑で大変な騒動になっていますね。当初、私もネイチャー誌掲載のニュースに興奮したクチなので、とてもガッカリしました。万能細胞がちょっとした刺激で作られると聞いた時にまず思い浮かんだのはケガや火傷のことです。ケガや火傷をするというのは細胞が刺激を受けるということです。それが引き金で新しく細胞が生まれ傷が治る。これには色んな科学的因子が関わっているんですが、それら全てひっくるめて創傷治癒機転といいます。

 傷の刺激で創傷治癒機転が働くんだから、細胞が万能性をもつ状態に戻ってもおかしくないな。何で気が付かなかったんだろうと関心した次第です。ヒトを含め哺乳類は指や腕が無くなるような大きなケガでは元通り再生しませんが、もっと下等な両生類などでは完全に再生されることが知られています。iPS細胞のように遺伝子をわざわざ入れなくても、何らかの刺激だけでヒトでも大きな組織や器官が再生できたら素晴らしい。

 興味がある人だったら誰もが夢を見てしまうような研究だったわけです。それだけにSTAP細胞があるかもしれないという仮説までは魅力的です。その最初の報告がまっとうな科学的手順を踏まずに世に出てしまったことが、この研究に将来にわたって暗い影を落としてしまうでしょう。

 私は一介の臨床医ですので研究者ではありません。しかし多くの医師がキャリアの中で一度は研究に携わる習いに従って、いわゆる研究をしていた事があります。それも理化学研究所で。

 もう15年以上前の事ですし、神戸ではなく埼玉県和光市にある理研です。とある画像診断機器を網膜剥離などの眼底疾患の病態解明に応用できないかという研究をしていました。臨床医として大学病院で普通に働きつつ、週に一度ほど研究室に通う訳です。時間も限られてますし、もちろん実験は素人です。とても一人では出来ません。理研の研究者との共同研究という形でした。というか私はほとんどオマケです。

 ずっと研究ばかりしてきた理研の研究者と普通の医師では、研究という分野において大学生と幼稚園児くらいのレベルの差があります。研究の組み立て方、実験のデザイン、実際の手法からデータの記録まで全く何も知りませんでした。まさにイチから教えを請う形で何とかお邪魔させてもらっていたという感じです。本当に迷惑ばかりかけました。キムワイプで鼻をかんで叱られていたのが懐かしい。

 大変な思いもしましたが、今では懐かしい思い出です。そこで感じたのは彼ら研究者たちの愚直なまでの誠実さです。めんどくさくても疲れてても、条件が揃うように手順をしっかり確認し、辛抱強くコツコツと日々データを蓄積する。それはそれは地味な仕事です。とても世紀の発見のような華やかさとは縁遠い。彼らは大発見のヒーローになりたいんではなくて、純粋にサイエンスが好きなんだと思います。

 とても私のような浅薄でいい加減な人間には研究は勤まらない。そう自覚できたのは幸いだったかもしれません。研究とは、探究心でも人類愛でも何か強い意志に基づいて、冷徹な判断と正確な実証によって真実ににじり寄るようなものかもしれません。どこか登山に似た孤高な仕事だと思います。

 間違いなく理研の研究者は一流だと思います。それだけに今回の騒動は残念でなりません。当時お世話になった研究者の方々はどういう思いでしょう。理研の門から緩い坂の上りにかけて桜があったと記憶しています。もう散ってしまっただろうな。

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2014年03月10日

春よ来い

 3月とは思えない寒い日が続いています。
 あの震災から3年経ちます。早いものです。ここに書くにあたり、当時、書いたものを読み返しました。とりとめも無い事をつらつら書いていたようですが、内容は忘れてしまっていました。

 もちろん、止まった線路の脇を延々と歩いたこと、春とはいえ節電で暗く寒い部屋で過ごしたことを忘れたことはありません。でも3年とは記憶も心の傷も和らげるものだなあと思います。良くも悪くも。

 被害に遭われた方々の心の傷は想像もできません。いまでも苦しんでいることと思います。本当に心からお悔やみ申し上げます。心の傷はなかなか癒せないものです。

 それに比べ、身体的な傷は底知れない治癒力を持っていると感じます。深い傷や病気も時間が経てば序々に治って行きます。もちろん、その潜在的治癒力を越えたダメージがあると治りませんが、存外その力の及ぶ範囲は広いように思います。

 角膜の表面は傷やコンタクトで簡単に傷ついてしまいます。敏感な場所なので非常に痛みます。しかし驚くほど早く治って行きます。同じ粘膜である口の中を火傷した時と同じように。瞼は皮膚なので、それほど早くはありませんが、かなり広範な傷でもキレイに治ります。

 転倒して顔面に大きな擦り傷を作ってしまうことがあります。酔っ払っていたり、荷物を持っていて防御的に手が出なかった場合などですね。古い擦り傷が残ったりした経験を皆さん少なからず持っているので、顔に傷が残るのではないかと心配されます。何より眼のまわりは常に動くので痛みも強いですね。

 以前は染みるのを我慢して消毒し、絆創膏を貼っておしまいでした。カサブタが出来て剥がれると、ちょっと汚い傷跡になって治るのが当たり前。

 最近はフィルム状の被覆剤を使います。市販されているものでキズパワーパッドってありますね。ちょうどあんなようなものです。傷を流水で洗って、ゴミや汚れを落として貼ります。上瞼の眼に近い部分などは貼れないので、保湿剤でカバーするだけです。想像するより遥かにキレイに治ります。

 これのいい所は痛みが少ないことです。絆創膏や眼帯はガーゼみたいなものですから乾いて貼付き、交換するのも動かすのも痛い。洗顔なんてとても出来ません。もし怪我をしてキズパワーパッド使うことがあったら比べてみて下さい。比較の問題ですが痛くないと思います。ちょっと高いのが玉にキズですが。

 私も当初は半信半疑でした。娘が小さい頃、駐輪していたバイクのマフラーで火傷したことがあって、その際に初めて見たのが被覆剤でした。親として傷跡が残ったらどうしようと気を揉みましたが、杞憂でした。わずかな色素沈着を残し、大きな火傷の創面は治癒しています。10年経って、今ではほとんど分かりません。

 先日、ラッシュという映画を観ました。70年代に活躍したF1レーサーの話です。レース中にクラッシュしたニキ・ラウダは頭部に大やけどを負って、生死の境を彷徨います。手術で大腿部の皮膚を移植したそうです。6週後に奇跡の復活を遂げるんですが、生涯瘢痕が残ってしまいました。傷の深さや場所、規模にもよるので異論はあるでしょう。しかしあれを現代の湿潤療法で対処していればどうだったかなと考えてしまいます。

 心の傷を癒すにはは何が必要でしょう。身体の傷のように「環境」や「時間」は必要でしょう。曲がりなりにも時間も経ち、発展途上とは言え、当時より環境は改善しました。

 あとは「希望」でしょうか。こればかりはどうすればいいのか分かりません。

 いつもより咲くのが遅い河津桜。春よ早く来い。

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2014年02月15日

大雪のため臨時休診します

 2月15日土曜日、大雪のため臨時休診します。宜しくご了承下さい。
現時点で東急東横線など再開のメドが立たないようです。道路の状態も歩けるようになるまで大分かかりそうです。皆様お気を付けてお過ごし下さい。

 とりあえずクリニックまで行きましたが、自由ヶ丘まで引き返してきました。タクシーの行列は長くなるばかりです。東京都は思えない深い雪を踏み分けて帰宅しました。ソチよりよっぽど雪が多いですね。関係ありませんが、羽生金メダルおめでとう。

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2014年01月31日

十年一昔

 早いもので年が明けてから既に1ヶ月です。にも関わらず、新しい年号も西暦も未だに覚えられない今日この頃です。いつまでも時間が経った感覚が無い。恐ろしい事に、今年成人式を迎えた人たちが生まれた時には、もう働いたようです。完全に時間感覚が遅れています。まるで電池の切れた時計のようです。

 結膜炎などは何年かに一度、流行することがあります。これがいつ頃だったのか記憶が定かではありません。つい数年前のような気がしていますが...もっと前かもしれません。手持ちの資料を調べてみましたが、はっきりしませんでした。

 というのも、ここのところアデノウィルスによる結膜炎を診る事が多かったためです。アデノウィルスは粘膜が大好きなウィルスで、結膜炎としては流行性角結膜炎と咽頭結膜熱です。最近増えているようなのは咽頭結膜熱、通称プール熱です。

 当たり年といわれるような流行は10年単位くらいでやってくるように思います。これは免疫の無い学童期の子供たちの間で流行が一巡し、多くが免疫を獲得して流行が収束する。しかし彼らが大きくなって免疫の無い子供が増え、再び流行する。このサイクルが繰り返すためではないかと思います。

 今回の特徴としては冬の寒い次期に増えている点です。通常、アデノウィルスはメヤニを介して伝染するので、まさにプールの時期に増えます。6月から9月くらいにピークが来ます。冬にも小さなピークがあるんですが、今回はこの周辺で特に目立って多いようです。

 冬の流行については温水プールが原因という意見もあります。最近では一年中温水プールでスクールなどが行われていますから、その説も有力でしょう。しかしそれだと冬に限った事ではないはずです。私個人としては温泉施設なども怪しいのではと思います。寒くなってくるとスーパー銭湯やサウナに入りたくなりますね。

 また、交通機関の発達に伴って、日本中のウィルスが拡散しやすくなったのも一因と思います。盆暮れ後には多いと言われています。ウィルスはヒト無しではやっていけませんから、ヒトが移動するとウィルスも移動します。
 
 インフルエンザ同様、この時期には流行して欲しくない感染症です。学校指定伝染病で出席停止になってしまいますので、受験などに多大な影響を及ぼす可能性があります。同級生から在校生、兄弟から姉妹、小さな流行が人生に大きな影を落とす事もあるかもしれません。

 インフルエンザ予防のためにうがい、手洗いが励行され、結膜炎も流行も下火になったという報告もあります。やはりウィルス感染は予防が一番です。ぜひ手を洗いましょう。

 一年で一番寒いこの季節にサイクリングに行ってきました。しまなみ海道で瀬戸内海横断です。冷たい北の逆風で、修行のようでした。最後に温泉で暖まろうと思いましたが、パンクで時間を取られ、涙を飲んで帰りの電車に乗りました。

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posted by kawagucci at 17:20| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月10日

暗くなる前に

 いつの間にやら師走です。一般に先生業は忙しいようですが、幸い私は走り回るほど用事はありません。ただ日が短くなって、起床時も帰宅時も暗いというのは不便です。凍てついた真っ暗なアスファルトの上で自転車を漕いでいると、さすがに気が滅入ります。寄り道する元気も萎んでしまいます。やっぱり冬はあまり好きになれません。

 どうしても冬の夜長は、インドアが多くなります。録り貯めた番組を観たり、釣りの仕掛けを作ったり。最近てきめんに手許が見にくくなった事もあり、長時間やって疲れてしまうこともしばしばです。

 昔はこんな場面で緑内障発作を起こす事が多かったそうです。ある特徴の眼を持った高齢の方が、暗い所で長時間、うつむき姿勢をとると危険と言われています。ちょうど「母さんが夜なべして手袋...」なんて場面でしょう。

 ある特徴とは狭隅角眼といいます。眼の中には房水という水が入っています。この多い少ないが眼の圧力、すなわち眼圧を決めています。毛様体という場所から出て、隅角という場所から出て行きます。スムーズに流れていれば問題ありません。

 しかし例えば隅角という出口が塞がってしまうと、房水は増える一方ですから眼圧が上がって緑内障を起こしてしまいます。極めて高い眼圧になると、短時間で眼の神経を障害して視野が欠けてしまいます。目の痛みだけでなく、頭痛、嘔吐などを伴うので、最初に内科に受診されることも珍しくありません。発見が遅れると、転帰は悲惨です。

 なぜ隅角が塞がってしまうのでしょうか。隅角とは虹彩と角膜の隙間なんですが、図が無いと分かりにくいかもしれません。余り知られていませんが、遠視の人は眼の直径が短いです(近視の人は長い)。眼が寸詰まりなので、組織と組織の隙間が少なく、ゆとりの無い構造です。こうなると、ちょっとしたことで房水の流れが遮断されやすくなります。

 たとえば高齢になると白内障になるものですが、これは水晶体というレンズが濁ります。実は生卵が茹で卵になるように、白く濁るだけでなく、少し膨れます。水晶体というのは元々眼の中では大きな組織ですから、膨れるとその周囲を圧迫するので房水の流れも遮断されやすくなります。

 また、うつむき姿勢というのも、眼の中の組織が下の方に偏ることになります。隅角というのは眼の前方にあるので、うつむき姿勢では下方になる格好です。よってこれもまた房水が滞りやすくなります。

 そして瞳孔の大きさ、これが直接の引き金になる最大のリスクかもしれません。暗い所や薬の影響で瞳孔が大きくなると、虹彩は縮んで厚くなります。厚くなった所では角膜との隙間が少なくなるので、当然隅角は塞がってしまいます。

 これが三つ揃いやすいのが、高齢で白内障のある方が長時間暗い所でうつむき姿勢をとる状態です。おばあちゃんの丸い背中が目に浮かぶようです。

 前兆として、そういった作業中に頭や眼が重い感じ、違和感を覚える場合もあります。発作を起こしてからでは大変なので、一度確認させて頂ければ幸いです。外来で普通に診察するだけで、なりやすい眼か、そうでないか、概ね診断できます。

 もし緑内障発作のリスクが高い目であっても、発作を起こさないようにする事が出来ます。一つにはレーザーを使ったもの、もう一つは白内障の手術です。虹彩にレーザーで小さな穴をあらかじめ開けておくと、万一緑内障発作が起こりそうになった時に房水の流れを確保できるんです。抜け道とか裏口みたいなもんでしょうか。

 しかしこれは長期的には角膜に問題を起こす可能性もあって、注意が必要です。レーザーの熱や、開けた穴からの水流で、角膜の内側に長期的なダメージを与え、角膜が濁ってしまうことがあるからです。そうなると角膜移植しか治す手だてがありません。

 ある程度の年齢の方なら、白内障手術がいい適応です。緑内障なのに白内障の手術?と思われるでしょう。白内障の手術では、濁った水晶体を人工のレンズに置き換えます。実は人工レンズの直径や厚さは、水晶体よりかなり小さいんです。狭い眼の中で大きなウェイトを占める水晶体が、小さな水晶体に置き換わるわけですから、眼内のゆとりは大きくなります。隅角も広がるわけです。

 白内障手術は近年、比較的安全に行われている事も、これをお勧めする理由になります。もうすでに白内障が出ているのなら、積極的に考えてもいい予防方法でしょう。

 紅葉は美しいですが、落ち葉が下水道を詰まらせてしまわないように掃除が必要です。水路は大事ですね。

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posted by kawagucci at 14:30| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月31日

ばいばいきん

 毎週のように台風が発生した10月でした。日本に近づき被害をもたらした台風もあり、改めて自然災害の恐ろしさを痛感しました。天災は忘れた頃にやってくる。しかし台風が過ぎる度に秋になっていったように感じます。台風が多すぎて秋らしい空は拝めませんでしたが、日が短くなり朝晩は冷えるようになりました。

 先日、悲しいニュースを目にしました。
「アンパンマン」シリーズの人気漫画家、やなせたかしさん死去 94歳
 アンパンマンは国民的キャラクターと言っても言い過ぎではありませんね。中学生になる我が家の娘たちも大変お世話になりました。今もこの診察室で小さな患者さんの対応に頑張ってもらっています。

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 本当にどんなお子さんでも知っていて、涙も不安も一発で吹き飛ばしてくれる頼もしいヒーローです。ドキンちゃんも女の子には人気です。バイキンマンは...たまに好きな方もいらっしゃるようです。割と独創的な子たちかな?

 バイキンマンは悪役なので仕方ないですね。バイキンは総じて悪というのは、概ね公衆衛生上間違いではないでしょう。手洗いや歯磨きといった感染予防習慣の普及に多大なる貢献をしたのは間違いないと思います。バイキン(黴菌)とは色んな業界で定義は異なるようですが、人間や人間の暮らしに有害な微生物というのが大体なところでしょうか。医学用語ではありません。我々は細菌、ウィルスという生物としての単位で考えます。

 細菌は感染症や腐敗の原因となるのでイメージは悪いですね。汚い臭い気持ち悪いというのは、生理的にこれを遠ざける本能なのかもしれません。風潮としてはちょっと困ったなと感じています。何でもかんでも細菌は悪いというのは誤解だと思います。

 時々いらっしゃるのはバイキンを恐れるあまり、潔癖になり過ぎてしまっている方。瞼や結膜のアレルギー、感染症で、背景に洗い過ぎがある場合が散見されます。瞼のような皮膚の薄い所をゴシゴシと擦り洗いすれば、表面は簡単に痛んでしまいます。

 皮膚の表面には角層という古い細胞や脂で守られています。このバリアは極めて優秀で、体内の水分の蒸発を防ぎ、様々な物質が入り込む事を防いでいます。しかし擦ってしまったり、石けんや化粧落としなどで脂を落とし過ぎてしまえば、痛んでしまいます。そうすると乾燥しやすくなって痒くなり余計擦ってしまう。アトピーの方はこの辺の細胞の結合に必要な物質が足りなくて、やはり乾燥しますが、同じ原理だと思います。

 皮膚には元々常在菌といって細菌が住んでますが、彼らは通常は悪さをしません。毒を出したり、皮膚を攻撃するには多大なエネルギーが必要なのですが、そんな無駄をするくらいなら美味しい脂を食べて暖かく湿った場所でヌクヌクと増える方がいいという連中です。彼らが隙間無く分布してくれているので恐ろしい細菌は増える事が出来ないのです。バリアの一部とも言えますね。

 擦って赤くなってカサカサになる頃には、美味しい脂も無く乾燥して常在菌にとって住み良い環境では無くなってしまい、いなくなってしまうのです。そうして空いた余地に別の細菌が来て(常在菌の中に裏切り者がでることもありますが)増えてしまうのです。バイキンを恐れてバイキンを招いてしまう、チグハグな結果となるのです。

 余談ですが、これだけ強固なバリアがある健康な肌に、化粧品や美容液などを使っても効果があるんでしょうか。使わないのでサッパリ分かりません。ぬるま湯で洗うだけで十分奇麗になると思います。あの値段をみてしまうとますますそう思います。

 もし乾燥して赤くなった場合、痒みを抑え、石けんを控え、保湿するだけで治っちゃう事が多いです。きっとまた常在菌が復活するのでしょうね。アメリカの女優、ジェニファー・アニストン(ドラマのフレンズに出ていました。古いかな)は基本ワセリンしか使わないと聞いた事があります。私も外来で多用するのは精製ワセリン(プロペト)です。

 これから冬になると乾燥してきますので、このようなトラブルが多くなってきます。

 それではばいばいきん。
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2013年09月14日

夏のブルー

 ちょっとご無沙汰しているうちに夏が終わってしまいました。お盆休みを境に診療時間の変更などを行い、準備と対応でバタバタしておりました。土曜日の午後の診療は無くなってしまいましたが、午後1時半まで昼休み無しで頑張っております。また平日の午後の開始時間が地味に30分早くなっています。ご不便おかけしますが、ご了承下さい。

 今年の夏は暑かったですね。それでも最近は朝晩の気温が下がってきました。おかげで通勤時に自転車に乗っても汗だくという事は無くなりました。日も短くなって、帰る頃には真っ暗でです。これは何だか寂しいです。

 夏の間にサングラスを話題にしようと思っていたんですが、タイミングを逸してしまいました。夏になると、外来の度に質問されます。あとブルーライト。これをカットするメガネが最近だいぶ売れているようですね。実は私も使っています。診察室のノートパソコンを使うときしか掛けませんが。

 理屈の上では青い波長の光は他の光に比べて目に良くないのは確かです。青より短波長、つまり紫や紫外線は水晶体や角膜で吸収されます。あんまり酷く暴露されると白内障や雪目になるのはそのためです。その身を呈して、眼の奥を守っているとも言えます。青より長い波長は実は余り目に害はありません。

 青い光は網膜まで到達してしまうため、様々な害があるというわけです。実はまるきり無防備というわけでは無く、黄斑色素という成分でブロックしています。しかしこれがうまくいかないと黄斑変性などの病気になると考えられています。こういう病気や病気が疑われたりする場合は予防的にブルーライトをカットするメガネを掛ける意義は大いにあると思います。病気でない人はどうでしょう。

 ブルーライトをカットするメガネを販売するところでは、モニター等から発せられるブルーライトが疲れの原因と言っています。理屈としてはそういう事実はあると思います。でも疲れの原因は果たしてブルーライトだけでしょうか。近視や乱視など度の問題や、老眼という可能性もあるでしょう。もしかしたら他に病気がある可能性もあります。あるいは単にVDT作業、つまりパソコンのやり過ぎや環境の問題かもしれません。

 ブルーライトをカットするだけで、全てが解決ということは無いでしょう。やはり疲れる場合は一度、見せて頂いた方がいいと思います。ドライアイや度の合っていないメガネなどで簡単に改善されるケースは多々あります。緑内障や虹彩炎であったこともありました。

 40代くらいになってくると、老眼が出てきます。しかしこれを患者さんにお話しするのは中々抵抗があります。誰でも老化と言われるのは嫌なものです。しかし老眼鏡を試しにかけて頂くと、往々にして納得頂ける事が多い。実際に処方する段階で、ブルーライトをカットするメガネとして処方すると、ちょっと?気が楽になる部分があるかと思います。これは老眼鏡ではなく、ブルーライトをカットするメガネだと思って掛けて頂く。

 ほんの少し老眼の度が入っててもまずバレません。何を隠そう、私の使っているのがそうだからです。気になる妙齢の方がいらっしゃれば、試しに掛けてみてもいいですよ?

 私は45歳ではっきり老眼を自覚しました。釣りをしていた時に、仕掛けを結ぼうとして全然見えなかったのは軽くショックでした。水平線の彼方に跳ねる魚に合わせると、手元の針にエサを付けられない。もう指の感覚とカンで結ぶしかない。

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 カツオを釣ってきました。夏に黒潮に乗って回遊してきます。夏ともにやってきて、夏とともに去ってゆく。一番いい季節を教えてくれる大好きな魚です。

 カツオやマグロなどの高速回遊魚は、青い波長、ブルーライトに対する感度がいいらしい事が遺伝子の検査で分かりました。彼らはイワシを追っています。イワシの背は青から紺色なので、そこがよく見えるように進化したのかもしれません。海の上から見ると魚の背は海と同じ色をしています。これは海鳥からの保護色です。

 生きているカツオの背もまた鮮やかなブルーです。魚やさんの店先では単なる縞模様しかありませんが、釣ったばかりのカツオは本当に奇麗です。この宝石のようなブルーは、夏の一時、太平洋に熱帯の海をつれてくる黒潮の色です。これほど美しいブルーは他に知りません。

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posted by kawagucci at 11:43| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月20日

診療時間変更のお知らせと

 梅雨らしくよく降ります。台風まで来てしまいました。紫陽花でも撮ろうかと思っていましたが、雨で自転車も出せません。蒸すので非常に不快です。

 梅雨といえばカビ、この高温多湿の環境は彼らにとって天国ではないでしょうか。日本は発酵食品の多い国ですが、さもありなんと思います。納豆、醤油、味噌、酒、鰹節、何れも我々の食卓には欠かせないものばかり。珍しい所では、くさや、なれ鮨なども。保存のためとは言え、本当に驚きです。きっとここに至るまで、日本各地で何千何万と試行錯誤されてきたのでしょう(絶対に失敗作は食べたくない)。

 私も発酵という現象には非常に興味があります。学問というより、旨い酒や焼酎を漁っているうちに目覚めたというのが本当の所ですが。ただ酒や肴というのは発酵とは元々馴染み深いものですから、そうした切り口の文献は沢山ありました。なかでも「もやしもん」という漫画は非常に勉強になりました。

 ニホンコウジカビのオリゼーが主役といってもいい漫画です。農大を舞台に酒や発酵をからめて展開する学園ものですが、作者の説明によると「農大で菌とウイルスとすこしばかりの人間が右往左往する物語」だそうです。いい年して漫画というのもなんですが、微生物学や農学の勉強になります。あんまり面白かったので、農大にある博物館まで遊びにいった程です。

 先日、作者の石川雅之がニュースになっていました。
昨今流行が続いている風疹について、神戸大学医学部附属病院の岩田健太郎先生の監修をいただきつつまとめてみましたのでご自由にお使いください。

 風疹の流行を危惧されております。事実、今年の流行はこれまでにないレベルだそうです。この風疹、いわゆる三日麻疹(みっかばしか)として罹られたことがある方も多いと思います。風疹そのものは恐れることはありません。しかし妊婦さんが罹ると大変であることは、もう皆さんご存知のことと思います。

 先天白内障の原因として、先天性風疹症候群は有名です。今年の秋以降、増えることが予想されております。ついにアメリカのCDCは妊婦の日本への渡航に関してより注意するよう勧告を出しました。日本は風疹の予防接種を受けていない人が多く、悲しいことですが海外では危険な国と思われています。

 対策に関しては石川さんの漫画に詳しいのでシェアすることで割愛させて頂きます。

 最後にクリニックからのお知らせです。一つは8月14日(水)から18日(日)までお盆休みを頂きます。また、もう一つはお盆明け、8月19日(月)からの診療時間変更のお知らせです。

 平日の午後の診療時間が変わります。これまで午後3時からでしたが、午後2時30分から開始します。

 土曜日の午後の診療を取りやめます。そのかわり午前の診療時間を午後1時30分までとします。

 近隣の院外処方箋薬局の診療時間変更に伴うものです。ご迷惑おかけして申し訳ございません。何卒ご理解頂きますよう宜しくお願い致します。

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posted by kawagucci at 17:06| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする