2015年01月04日

耳下腺腫瘍 術後1日

12月25日 術後1日
7時前頃に起こされ、オシッコの管(バルーン)を抜いてもらいました。これも微妙な痛みですが、その後初めてトイレに行った時の痛みは半端無かった。おそらく麻酔のゼリーがダラダラ出て、知らないとウミかと思うかもしれません。体を拭いてもらって着替え、やっと動けるようになりました。特にフラつきもありませんでした。

トイレの鏡で見てみると、顔の左半分はアンパンマンのように腫れていました。耳の前から顎下の首にかけて半透明な被覆材でシールされ、耳の後ろからはドレーンチューブが出ています。ドレーンとは体内に挿入されたチューブで、腫瘍をくり抜いた空洞に溜まる血や浸出液を排出するものです。しばらくはそれを溜めておく箱を首からぶら下げて歩くのです。可愛いポーチに入っているんですが、院内をお散歩する時にiPhoneやお財布を入れるのに便利でした。

診察後、約3食ぶりに食事です。納豆ご飯がこれほど美味いとは思いませんでした。その時に口が大きく開かないことに気が付きました。テープで突っ張ってるのと痛みが原因でしょうか。お行儀よく食べる他ありません。物足らなくて売店でアイスを買って食べました。

リカバリールームから戻り、タオルで顔を拭いたり歯を磨いたりしました。この時、左の頰と耳下半分の感覚が全く無いことに気付きました。それまでテープに覆われているからだと思っていましたが、そこは外に露出しています。耳朶をつねっても引っ張っても全く分からないのです。他人の耳朶の様でした。

耳朶に感じる、犬を抱き寄せた時のくすぐったさや、自転車で感じる冷たい風が好きでした。ちょっと残念です。誰もいない病棟の隅っこで口笛を吹いてみましたが、こちらは全然問題ありませんでした。なんとか無事に終わった開放感で、とても幸せなクリスマスでした。
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耳下腺腫瘍 手術

12月24日 手術当日
普段と同じく6時前には目が覚めてしまいます。1年で一番、日が短い頃ですから外は真っ暗です。何もすることが無いので、しばらくボーっと東の空が明るくなるのを眺めていました。この数ヶ月、何をしていても常に気掛かりだった手術の日がついにやってきました。私はこれまで身体にメスを入れた事がありませんでした。眼科とはいえ、かつては日常的に何件も手術してきたのに、自分の時はそれなりに恐怖感があるものです。昨夜零時から絶飲食なので、朝食も昼食も摂れません。OS1という脱水防止の水500mlしか飲めません。ポカリのような甘ったるい味で喉をかき、かえって渇きます。手術は午後12:30頃と言われていました。頃というのは、その前に他の手術が入っていて終わり次第ということです。私の大学ではオンコールと言っていました。なるべく沢山の手術を詰め込むため、一つ一つの手術時間を短めに申告してます。ただでさえ手術は予定外の事件が起こります。よって大抵遅れるものです。

いよいよ13:00頃にお迎えが来て、歩いて手術室に向かいます。最近は取り違えや左右間違いなどの事故防止のためのチェックが厳しいです。入口で前日足にマークした左右を示すマジックを確認したり手首のバンドや名前の自己申告があります。緊張して46歳なのに64歳と答えてしまいました。ベッドに横になり左手に点滴のルートと酸素飽和度を測る装置が付けられ、胸に心電図のシールを貼られ、酸素マスクを装着されます。こうしたことがまるでF1のピットクルーがやるようにキビキビと同時進行するので、考える間もありません。だいたい何をやっているのか手順が理解しながらボンヤリ天井の無影灯を見ていました。
「眠くなるお薬が入りますね」という麻酔科医の声が聞こえたとほぼ同時に意識が遠くなりました。

術直後
実は手術後最初の記憶は帰室後なので、麻酔から覚めてからしばらくはかなり意識が混濁していたようです。ベッドに移されエレベーターに乗ってるはずなのに、どうやって戻ってきたのか覚えていません。ぼやけた視界の中で家族が見えたこと、ドクターの術中迅速病理では良性の多形腺腫であると伝えられた事はしっかり理解していました。時間を尋ねると17:00を過ぎている。4時間近く掛かっていました。当初2〜3時間と聞いていたので、存外手間がかかったのかもしれません。これまた記憶が曖昧なんですが、恐らく顔面神経麻痺の有無を確認するために「い〜」とか「う〜」とか言わされたようです。問題なく出来てホッとしました。
すぐに家族も帰宅し、リカバリールームというナースステーションに近い大部屋に一人になりました。自由になる右手で顔を探りますが様子がよく分かりませんでした。耳から首にかけてテープで頑丈に覆われているようです。痛みはありませんでした。ただ暑かった。風邪をひいて高熱がある時のようです。しばらく吐気もありました。船酔いを堪えるようにもがいている内に収まりました。おそらくうつらうつらとしていたんでしょう。時折聞こえる周囲の物音で刹那覚醒し、時間の推移を知る事が出来ました。夕食のワゴンの音、売店が閉まる放送、消灯時間のチャイム。その後は2時間ごとに来る夜勤のナースの気配だけ。メガネもコンタクトも無いため視界はボヤけ、薄暗がりで、ただ時間が経つのを耐えていました。そうして長いクリスマスイブの夜は明けました。
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耳下腺腫瘍 入院初日

12/23 入院初日
入院して病棟に上がると、なんとなく懐かしい感じがします。私が長く過ごした大学病院と同じ雰囲気がします。ちょっと古い首都圏の大学病院はみんな似たような感じなのかもしれません。疲れた無精ヒゲの若いドクターや、キビキビ立ちまわるナースを見ていて、自分の研修時代を懐かしく思い出しました。いくつかの検査と説明があった後は山のような承諾書にサインです。最近は何をするんでも承諾書が必要です。しかしそれも終わると後はやることがありません。ひたすら暇です。持っていったiPadですが、格安SIMのせいか、環境のせいか、ネットのつながりが悪くて使い物になりません。TVを観ているうちに、いつのまにか寝てしまいました。
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耳下腺腫瘍 治療方針

11月 治療方針
選択の余地がないと言う事は迷う必要が無く、かえって楽でした。こういう場合、取りあえず他に治療方法が無いか右往左往、いや情報収集するのが普通でしょう。商売柄、私はこの手の病気には標準的な治療方針があって、どこにかかっても大きな違いはないと思っていました。幸い自分で専門的な文献をあたることもできました。極めて稀な腫瘍なので、手術件数や成績を参考にすることはあまり意味がありません。自分が信頼できるドクターであればそれで良いと思いました。

ちなみに執刀医のドクターは若くて綺麗な目をした好青年でした。私が大学病院にいた、同じような年の頃より、はるかに熱心で健康的です。 ハッキリした説明も好印象でした。
検査の結果、腫瘍の境界が不鮮明であること、痛みがある事、血流が豊富である事から悪性の可能性があると告げられました。

余談ですが、私も病気の説明をする時にハッキリと言う方です。診察台の向こうに喋っているのは自分ではないかと思いました。ただ私のように情報に恵まれている場合と、全くの素人では受け止め方が違うかもしれません。人によっては気持ちに寄り添いつつ、時間をかけて納得してもらった方がいいと実感しました。

こうして手術の予定が組まれ、準備のために追加の検査をしました。全身麻酔なので、レントゲンや心電図、呼吸機能などです。ちょっと中性脂肪が高かったのはショックでした。

12月 準備
手術には最大10日ほどの入院が必要です。こうなると開業医としては死活問題です。外来に穴が空くのは仕方ないとしても、紹介した手術患者さんの術後管理や、多くはないですが経過の心配な患者さんに対し責任持って対処しないといけません。事情を酌んで御高配頂いた医療センターの先生に、この場を借りて御礼申し上げます。

もし悪性であれば、これまでのように働くのは難しいかもしれない。顔面神経麻痺になれば顔が曲がって子供たちに怖がられてしまうな、とか、転移したら闘いながらどれくらい生きられるかしらと、暗いことをツラツラ考えてしまいました。大好きな釣りをしていても、自転車に乗っていても、いくらお酒を飲んでも、到底拭い去ることのできない不安です。こういう場合、分かっている材料を等しく客観視する事が大切です。しかし悪い材料を怖れて忌避し、良い材料にすがろうとするものです。私もそうでした。しかし最終的には医師目線で自身を客観視することを心掛けるようにしました。その結果、自分も自身の主治医の一人になったような感覚がありました。

病気の診断には絶対はありません。必ず未知の部分があります。医療者として未知の部分を説明しなければならない事は多々あります。しかも、その可能性について余すことなく説明する義務があります。しかしこれが患者さんの未知の部分への怖れを増長してしまいがちです。未知の暗闇に目を凝らしても今はまだ見えないのです。そこに猛獣が潜んでいるのか、ただの影なのか。私たち医療者は怯える患者さんの手を取って見える所まで連れて行かなければなりません。そしてそこまで一緒に来たのなら、もし結果が患者さんの望むものでなくても、決して手を離してはいけないのだと思います。

私は楽天的なので、まあ大丈夫だろうと考えるに至りました。また、病院の都合で予定が1週間遅れ、クリスマスイブの手術予定となりました。結果的に仕事への影響は最小限で済むし、何と言ってもクリスマスイブですから成功するような気がしてきました。
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耳下腺腫瘍 きっかけ〜検査

左耳の下にある唾液腺(耳下腺)に腫瘍が出来て、入院手術を経験しました。その闘病記を残しておくことにします。10万人に数人という比較的稀な疾患で、Blogなどの情報が少ない事に気付いたこと、また専門外ですが医師という視点から書けたら面白いかもしれないと思ったこと、心配おかけした皆様に少しでも説明になればと思ったこと、そして入院中あまりにヒマだったことがその動機です。
キーワードを辿って此処に行き着いた、同じ病気のあなた。その不安を少しでも和らげる助けになれば幸いです。

2014年3月 きっかけ
左の耳の下、ちょうど顎骨の角の裏にシコリがある事に気付きました。弾力のある滑らかな感触で、直径2センチくらい。ちょうど顎関節症を患っていたので、関節のトラブルかと思いました。痛みも無く、邪魔にもならないので放置していました。実は歯科受診の際に精査を勧められたんですが、タイミング合わずそのままになってしまいました。

9月 症状の変化
丁度しこりの周囲が急に腫れてズキズキと痛くなりました。最初は扁桃腺でも腫れたかと思いました。しかし明らかにシコリが痛みの中心で、いつまでたっても改善しませんでした。心なしかシコリ自体も大きくなっています。耐えかねて同じ学校医をされている耳鼻科を受診しました。そこで初めて唾液腺の一つ、耳下腺の腫瘍が疑われると知らされました。

10月 検査
義父が耳鼻科医だったので、そのツテで大学病院を受診し、詳しく調べることになりました。MRI、造影CT、超音波などの画像診断と、シコリに針を刺して中身を吸引する生検を行いました。腫れと痛みは徐々に引き、元のシコリに戻ったようでした。時折、つーんとする感じ、いわゆる疼痛というのはありました。唾液が出るときに痛むとか、食べ物によってとか、全く関係ありません。唐突に始まって小一時間程で収まってゆく感じです。外見的は触診の際にはドクターでも探しにくく、「ホラここですここです。」と伝えないと帰されちゃいそうなほど無症状。

11月 検査結果
検査の結果が出ました。「耳下腺腫瘍」で間違いないようです。ただ耳下腺腫瘍には良性と悪性があります。良性のものも一部は悪性に変化します。悪性とはつまりそこで破壊的な増大をきたしたり、転移して命に関わるという事です。また良性のままでも、ゆくゆくは大きくなって近くを通る顔面神経に影響が及び、麻痺を起こすことがあります。どっちにしても薬などで小さくしたりすることは出来ないので、手術で取るしかないのです。同時に確定診断は取ってみないと分からないのです。もちろん大きくなるにしろ、悪性化するにしろ、転移するにしろ、今すぐという訳ではありません。ただこの半年の変化を考えると、年単位で放置という選択肢は無いようです。
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2014年11月25日

続・年末年始について

 入院先の病院から連絡があり、ベットの都合で入院が一週間ずれることになりました。12月23日から翌1月7日まで休診させて下さい。急に予定が変更となり申し訳ございません。結果的に診療には余り影響が無くて良かったです。
 ちなみに今のところ検査結果はあまり深刻な状況では無く、来年も元気に働けそうです。ご心配おかけして誠に申し訳ございません。皆さんもお身体に気をつけて下さい。

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取り急ぎ、ご報告まで。
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2014年11月13日

休診のお知らせ

 年末年始の予定ですが、12月17日から来年1月4日まで休診となります。年末年始に長期間、ご迷惑をお掛けすることとなり、申し訳ございません。

 思いがけず入院して手術を受ける事となりました。その前後、恐らく診療には差し支えありません。ご心配おかけして重ね重ね申し訳ございません。

 休診中、スタッフは院内にて12月27日12時半まで例年通り対応します。12月前半はもしかしたら混雑するかもしれません。

 日に日に秋が深まる今日この頃です。皆様も身体に気をつけてお過ごし下さい。

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2014年10月08日

火災報知器の誤作動

 今日の夕方、当院の火災報知器が鳴り、消防が出動しました。たまたま休診日で自宅に居たところ、連絡をいただきました。結局、誤作動で火災はありませんでした。火災報知器が老朽化しており、誤作動したようです。消防に確認して頂きました。

 夕方の時間、長時間けたたましく警報がなったようで大変ご迷惑おかけしました。心配おかけして申し訳ございません。ビル管理会社の方で早速対応していただけるようで、今後このような事は無いと思われます。

取り急ぎ、ご連絡まで。

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2014年09月16日

女心と秋の空

 ちょっとサボったな、と思って前回の投稿日時を確認してみれば5月じゃないですか。いつの間にか蝉が鳴き、いつの間にか秋の虫の音が...。この夏は私事で余裕が無かったこともあり、書かなければと思いつつ時間が経ってしまいました。

 今年の夏は短かったですね。それなりに暑く、しんどい時期もありました。しかし今はもう、薄着では朝晩寒くなってきました。いつもならもう少し、半袖で過ごせたと思います。

 自転車通勤ということもあり、普段からとんでもなくラフな格好です。医師というとネクタイに白衣が当たり前と思ってらっしゃる方も多いでしょう。実際、勤務医の頃はネクタイはともかく年齢相応の服装でした。電車に乗りますし、勉強会や学会などオフィシャルな会合も頻繁にあったためです。

 しかし開業して以来、自宅とクリニックの往復ばかり。しかも公共交通機関の利用もほとんどありませんから、少し油断もあるかもしれません。まるでそのまま堤防で釣りが出来そうな格好です。丁度いい変装になり、街で誰かに会ってもまず気が付かれることはありません(自分でそう思っているだけかもしれませんが)。

 ごく稀に患者さんに声を掛けられることもありますが、基本的に目の悪い方が多いせいか年に数回です。私の方が気付いても、こちらからは声をかけることはしません。恥ずかしいという事もありますが、冷たくしている訳ではないんです。

 患者さんの中には通院していることを周囲に内緒にされている方もいます。闘病中であることを知られたくない方は少なくありません。様々な事情があると推察します。そんな事情を、私と会話していることによって暴露する訳にはいかない訳です。なのでとりあえず知らん顔をします。決して無視している訳ではないのであしからず...。

 先日、睫毛を長くする薬が発売されることになったと製薬会社の方から伺いました。元々は緑内障の薬なので、我々には馴染みのある製剤です。プロスタグランジンというんですが、眼圧を下げる効果が非常に優れていおり、この20年くらいで一気に普及しました。

 この薬にはいくつか副作用があり、中でも睫毛が長く濃くなる多毛は有名です。最近の化粧のトレンドを反映してか、この薬の副作用を逆手に取って、睫毛を長くする薬として個人輸入されていると聞いていました。ヤフオクなどにも流れていたりします。他にも色素沈着や目の落ち窪むなどの副作用があるので、無節制な濫用はまずいなあと思っていました。

 そんなネガティブな印象を持っていたので、担当者にどうして発売に至ったのか尋ねました。美容目的では無いかという点に抵抗を感じたためです。しかし彼から聞いた言葉は意外なものでした。曰く、抗がん剤などの使用で睫毛が無くなっちゃった方などが使われると。

 確かに最近では抗がん剤も様々で、副作用が目立たないものもありますが、未だに脱毛はよくある副作用です。頭髪の場合、よくできたウィッグなどがあり、ほとんどわかりません。しかし睫毛はそうはいきません。エクステもマスカラも残ってなければ使えません。

 病気である事を隠しておきたい方は、様々な事情でこれからもいらっしゃるでしょう。そんな方の助けになれば、このような薬も大きな助けになるかもしれません。

 女心とは難しいものですね。秋空を眺めつつ、そんなことを考えました。

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2014年05月16日

カラダのウラオモテ

 5月の連休も終わってしまいました。もう7月の海の日まで祝日が無いかと思うと少し残念です。3月からスギ、ヒノキと続いてきた花粉症もいよいよ終わりました。まだちゃんと統計が出ていませんが、ここ数年で一番少ない飛散量だったのではないでしょうか。

 実際に外来でも患者さんの数、重症度ともに僅かであったと感じます。昨年が酷かったこと、冬期が低温であったことがなどが原因ではないかと思います。ただ花粉症とされる患者数の増加、発症年齢の低年齢化も報告されており、油断なりません。

 花粉症をはじめ、アレルギーとは身体に入ってくる物質を異物と認識することから始まります。どこから入ってくるかといえば、大雑把に口からと皮膚からです。食べ物として消化管の粘膜を経由するか、体表面の皮膚を経由するかです。

 食べ物として入ってきたものには異物として排除しない、つまりアレルギーを起こさないような仕組みがあります。我々は食物として植物から動物まで様々なものを口にしますから、これは道理にあった仕組みです。逆に皮膚を経由した場合、これを異物として認識し攻撃する仕組みがあります。

 皮膚が身体の最表面にあって内部を守っているということから考えて、これも道理にあっています。また皮膚は触覚という感覚器でもあるので、危険なものか否か水際で最初に判断するには都合がいい。単細胞生物の時代から物質のやりとりを担ってきた表面というのはとても大事でした。ただの皮、内蔵を入れておく容器ではありません。

 例えば食物として問題無く食べていたものにアレルギーを起こすようになるのはどうしてか。もし食物が皮膚に接触し、その奥の免疫に関連する細胞まで届いた場合、異物として認識されます。その結果、食べた時にも激しく攻撃され、アレルギーを引き起こします。

 少し前に、「茶のしずく石鹸」により小麦アレルギーを発症するという事件がありました。石鹸に含まれる小麦の成分が原因とされています。この時は気が付かなかったのですが、これが石鹸であったために事態が悪化した可能性があることを後で知りました。

 食物としてはありふれた食材である小麦です。パンでもお菓子でも口にすることが多いと思いますが、ポイントはこれを皮膚に塗ったことです。皮膚から侵入した抗原は異物とみなされる。この仕組みによって、小麦アレルギーが引き起こされた可能性があるというのです。とくに石鹸のような界面活性剤は肌の角層を傷めますので、よけい侵入しやすくなります。

 他にもピーナッツアレルギーではピーナッツ入りクリームを使った経験がある子供に多いことなどが報告されており、皮膚を経由したアレルギーは他にもありそうです。元々アトピーなどでは皮膚のバリア機能が低下しているため、余計に感作しやすいことが考えられます。

 いかにも天然成分で耳に心地よい材料を使った製品は、美容関係にたくさんありそうです。少し寒気がしました。乾燥や荒れで、よかれと思って塗ったなにがしかが、かえってアレルギーの原因になりうるということ。清潔志向で石鹸を使って洗いすぎてしまうこと。たぶん良くあることではないでしょうか。

 最近、皮膚とアレルギー、免疫の仕組みに興味があって色々と勉強しています。疑問に思っていた生理現象について、なるほどと合点がいくことが多いです。

 口から入ったものに対しては異物として排除しないというもう一つの仕組み、これを利用してアレルギーを克服する取り組みもあります。脱感作というのですが、アレルギーの原因となっているものを少量ずつ口から摂ることによりアレルギーを起こさなくする治療法です。花粉を含んだ米を毎日摂ることによって花粉症を治すというのも実現間近と聞きました。

 小学校の検診から座高とギョウ虫検査が無くなるそうです。環境から糞便をはじめ、古典的な不衛生な要素はほとんど排除されているということでしょう。むしろ清潔を指向して、我々はどんどん本来の環境から離れて暮らしています。自然志向とは、天然素材を使った製品を消費することではなく、外に出て土に触れること、なるべく手の加わっていない物を食べることかもしれません。

 身体の外側で環境と対峙し、内側で懐柔する。考えてみれば単細胞生物だって、棘皮動物だってやっていることは同じことです。我々の高度な神経系も元々は皮膚から派生して出来たことが発生学的には分かっています。皮膚のセンサーとしての高度な能力が、そのまま中枢神経系に発展していったと考えれば、皮膚がただの皮ではないということが良く理解できます。

 皮膚のセンサーとしての働きが正常に行われるように、無闇に余計なことをしないことが肝要かもしれません。瞼というのは皮膚の中でも特に薄いことが知られています。紫外線、汗、化粧、温度湿度の変化に曝され荒れてしまえば、アレルギーの原因となる抗原との最初の接触現場に成りかねない。それを実感します。

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posted by kawagucci at 08:44| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする