2015年01月04日

耳下腺腫瘍 治療方針

11月 治療方針
選択の余地がないと言う事は迷う必要が無く、かえって楽でした。こういう場合、取りあえず他に治療方法が無いか右往左往、いや情報収集するのが普通でしょう。商売柄、私はこの手の病気には標準的な治療方針があって、どこにかかっても大きな違いはないと思っていました。幸い自分で専門的な文献をあたることもできました。極めて稀な腫瘍なので、手術件数や成績を参考にすることはあまり意味がありません。自分が信頼できるドクターであればそれで良いと思いました。

ちなみに執刀医のドクターは若くて綺麗な目をした好青年でした。私が大学病院にいた、同じような年の頃より、はるかに熱心で健康的です。 ハッキリした説明も好印象でした。
検査の結果、腫瘍の境界が不鮮明であること、痛みがある事、血流が豊富である事から悪性の可能性があると告げられました。

余談ですが、私も病気の説明をする時にハッキリと言う方です。診察台の向こうに喋っているのは自分ではないかと思いました。ただ私のように情報に恵まれている場合と、全くの素人では受け止め方が違うかもしれません。人によっては気持ちに寄り添いつつ、時間をかけて納得してもらった方がいいと実感しました。

こうして手術の予定が組まれ、準備のために追加の検査をしました。全身麻酔なので、レントゲンや心電図、呼吸機能などです。ちょっと中性脂肪が高かったのはショックでした。

12月 準備
手術には最大10日ほどの入院が必要です。こうなると開業医としては死活問題です。外来に穴が空くのは仕方ないとしても、紹介した手術患者さんの術後管理や、多くはないですが経過の心配な患者さんに対し責任持って対処しないといけません。事情を酌んで御高配頂いた医療センターの先生に、この場を借りて御礼申し上げます。

もし悪性であれば、これまでのように働くのは難しいかもしれない。顔面神経麻痺になれば顔が曲がって子供たちに怖がられてしまうな、とか、転移したら闘いながらどれくらい生きられるかしらと、暗いことをツラツラ考えてしまいました。大好きな釣りをしていても、自転車に乗っていても、いくらお酒を飲んでも、到底拭い去ることのできない不安です。こういう場合、分かっている材料を等しく客観視する事が大切です。しかし悪い材料を怖れて忌避し、良い材料にすがろうとするものです。私もそうでした。しかし最終的には医師目線で自身を客観視することを心掛けるようにしました。その結果、自分も自身の主治医の一人になったような感覚がありました。

病気の診断には絶対はありません。必ず未知の部分があります。医療者として未知の部分を説明しなければならない事は多々あります。しかも、その可能性について余すことなく説明する義務があります。しかしこれが患者さんの未知の部分への怖れを増長してしまいがちです。未知の暗闇に目を凝らしても今はまだ見えないのです。そこに猛獣が潜んでいるのか、ただの影なのか。私たち医療者は怯える患者さんの手を取って見える所まで連れて行かなければなりません。そしてそこまで一緒に来たのなら、もし結果が患者さんの望むものでなくても、決して手を離してはいけないのだと思います。

私は楽天的なので、まあ大丈夫だろうと考えるに至りました。また、病院の都合で予定が1週間遅れ、クリスマスイブの手術予定となりました。結果的に仕事への影響は最小限で済むし、何と言ってもクリスマスイブですから成功するような気がしてきました。
posted by kawagucci at 16:08| 耳下腺腫瘍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする