2008年11月25日

なだそうそう

 気が付けば11月も残りわずか、年末は目前です。布団から出るのが辛い季節になってきました。

 自転車で呑川緑道を北上すると、もろに正面から北風が吹いてきて自転車ごと押し返されてしまいます。春には南風が追い風になってくれていただけに、辛さもひとしおです。歯を食いしばって、ペダルを漕いでいます。

 この時期になると、涙がこぼれるという訴えが多くなります。暖かい部屋から冷たい外気に触れた時や、自転車で冷たい風を受けた時などに、じわーっと涙がにじんできますね。

 誰でもある程度はそんな経験があると思います。しかし極端に多くてポロポロと涙がこぼれてしまう、または片眼だけの場合は、もしかしたら問題があるかもしれません。ハンカチが手放せないという方は一度ちゃんと調べましょう。

 涙は眼を潤した後、目頭にある涙点と言う小さな穴から捨てられます。上下の瞼に各々一つ、開いています。ただの下水溝ではなく、ポンプのように排水しています。穴の先は涙小管、涙嚢、鼻涙管と通路が続き、最終的には鼻の奥まで通じています。泣くと鼻水が出るのはこの涙道と呼ばれる通路のためです。

 この涙道の通りが悪くなると、涙がちゃんと排泄されず、眼の表面に溢れてしまいます。そのため、何でも無いのに潤んでしまったり、刺激があるとこぼれてしまうのです。メヤニなども溜まりますから、固まって汚くなったり、眼の縁が赤くなったりする事もあります。途中の涙嚢という空間で膿が溜まって、涙嚢炎を起こすと厄介です。

 新生児で先天的に通りが悪い場合と、結膜炎や蓄膿症などの後天的要因が原因となる場合があります。以前紹介した"はやり目"の後に、よく発症します。涙道の入り口付近に問題が起きやすいためでしょう。もともと鼻が悪い人も、年を取って発症する事が多いようです。こちらは出口付近に問題が起きやすいためでしょう。

 新生児は多くの場合、自然に良くなることが多いようです。その他ではちょっとした検査や治療が必要になります。まず最初にやるのは、注射器を使って涙点から水(生理食塩水)を通す事です。注射器と言っても、先の尖っていない注射針を使います。うまく通れば喉に塩水が流れてきます。鼻の奥から喉や口の方に流れるためです。

 これで通らない場合、ブジーと言って針金のような金属の棒を通し、どこで詰まっているのか調べます。針金といっても先のデザインが秀逸で、ヌルヌルと涙道を進んで行きます。入った長さで、おおよその詰まった場所が推定できます。またブジーを通す事で、涙道を拡げたり、詰まった所を通すこともできます。検査と同時に治療も出来る訳ですね。

 ただ、この涙道は複雑な走行をしており、慣れないとなかなか通るものも通りません。指先の感覚だけで、曲がりの具合や骨の感触を頼りにブジーを進めて行きます。大学に上手な先生がいて、それを見てさんざん真似しましたが、コツが掴めるまで何年もかかりました。

 ブジーを進めながら、頭の中で三次元的に涙道の走行をイメージします。乱暴な操作をすると、本来の通り道ではない所にブジーが進んで行ってしまいます。無理は禁物で、こうなるとかえって治りにくくなってしまいます。

 ここまでの治療で良くならない、もしくは良くなっても再発する場合は手術が必要になります。軽いものでは、しばらくの間、チューブを涙道に通しておく方法、またレーザーを使って詰まった所を通す方法などもあります。成績の良いのは涙道を手術で再建する方法です。

 涙道と鼻は出口付近まで骨で隔てられていますが、この骨に穴を開けて新しい涙道を造る手術があります。目元の皮膚を切開するのが一般的ですし、骨にも手を加えますから、やはりそれなりの規模になります。入院も必要です。

 涙目は鬱陶しいものです。溢れるのを気にしてハンカチを持って歩くより、何らかの対策をとった方がずっと楽になると思います。ちょっと前に"なだそうそう"という歌が流行りました。沖縄の言葉で、涙がハラハラ溢れるという意味だそうですね。あれを聞くと外来でハンカチを持って座っている姿がどうしても思い浮かんでしまいます。

乾燥が厳しくなったので、加湿器を用意してみました。ハイブリット式で湯気は熱くありませんので、もし触っても危険ではありません。

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posted by kawagucci at 11:53| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする