最近は学会もリモート開催が多く、リアル参加も久しぶりです。大きな学会の会場を見渡してみれば、自分より若い先生がほとんどになりました。広い会場で同級生に会ったのはたった一人でした(すっかり偉くなって某大学の教授先生です)。寂しいですが、老兵は去るのみなんでしょうね。
学会で目新しい話題と言えば「近視」です。春に近視を抑制する点眼薬が認可されたこともあり、関連する発表はとても多かったです。従来からあったオルソケラトロジー(ナイトレンズ)に加え、遠近両用のように焦点距離を変えて近視を抑制するコンタクトレンズや眼鏡も増えてきました。その効果も発表通りならかなり期待できそうで、上手く続けられれば半分くらい近視は抑えられる時代になりそうです。
ただ問題は全ての治療が自費になる自由診療であるということです。点眼もレンズも、それに伴う検査費用も全部自費になります。小学低学年から10代半ばまで続けると、トータルで相当な金額になってしまいそうです。効果がこれだけ明らかなのに、金銭面で躊躇するケースがあるとしたら残念です。
近視で問題なのは単にメガネやコンタクトがないと不便というだけではありません。将来の病気が増えるという点です。緑内障や網膜剥離といった失明のリスクのある病気です。私自身、網膜剥離で2度も手術を受けているので、もし近視でなければと思わずにはいられませんでした。
ボーイスカウトで登山をしていて雨が眼鏡についてよく見えなかったこと。青年時代に二輪の免許を取るのに苦労したこと。旅行先で不便だったこと。
友人が旅先の川に躊躇なく飛び込むのが羨ましかった。東南アジアの夜行バスで、ヨーロッパの安宿で、どっかの乗り継ぎ空港でコンタクトの心配をしなくてもいいのが羨ましかった。近視じゃなかったらもっと挑戦したいことがあったような気がします。
学校検診がきっかけで近視であることが分かることが多いと思います。小学校低学年で近視を指摘されたら、近視の治療を行っている眼科にぜひ相談して下さい。ご両親が近視である場合は、高い確率でお子さんも近視になります。
実は当院では近視の治療は行なっていません。せいぜい近方視の時間を制限したり、外遊びを勧めるくらいです。
自費診療であり一般診療と会計上の分離が難しいこと、近視診療に必要な設備が無いことが理由です。一般的な視力検査で近視であることは分かりますし、眼鏡を処方することもできます。しかし経時的に近視を評価するためには眼軸長といって目の直径を測って管理しなければなりません。その機械を持っていないのです。高額なので手が出ないということもありますが、狭いクリニックにこれ以上、新しい機械を持ち込むことは難しいです。
6歳のお子さんが最長で18歳まで治療を続けて12年かかります。12年後、私は生きて仕事してるかなってちょっと思う年になりました。ちょっと秋になってセンチメンタルな気分になっているかもしれません。
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